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なぜ私たちが「政治資金センター」を立ち上げたのか?

 メディア各社から問い合わせが続いた。「82万9394円」についてだ。これは2013年に「桜を見る会」で安倍前総理の後援会がホテルで開いた前夜祭で会場となったホテル側に支払ったとされる金額だ。安倍氏の政治団体のひとつである晋和会の政治資金収支報告書(以後、収支報告書)に記載されている。

 都内の一流ホテルで開かれた懇親会で参加者1人当たり5000円支払ったとしているが、金額の安さに加えて後援会が資金を集めてホテル側が用意した領収書を手渡したという不自然な説明だった。当然、後援会が集めた上で足りない分を補填していた疑いがもたれていた。それが今回、東京地検特捜部の捜査によって明らかになりつつある。補填総額は800万円に上るとの報道もある。

 安倍氏の政治団体の収支報告書に記載がないことから、後援会が参加者とのやりとりに関わっていないとの無理な説明をしている疑いがあることは小欄でも指摘してきたが、事実であれば政治資金規正法に違反するとともに、場合によっては有権者への買収の疑いも生じる。

 こうした中でNHKなどが、安倍氏側が当初は記載していたが、問題になるとの懸念から記載をやめたと報じた。その証拠として挙げたのが冒頭の「82万9394円」だ。この報道が重要なのは、単なるミスによる不記載ではなく、意図的な隠蔽になるからだ。より重い犯情を裏付けるものになる。

 私がメディアから問い合わせを受ける理由は、事務局長を務める「政治資金センター」が、衆参両院議員の収支報告書を集めて誰でも閲覧できるデータベースを作っているからだ。この数字もこのデータベースで確認できる。問い合わせはその利用を求めるものだ。もちろん、自由に、無料で使える。

 なぜこの団体を立ち上げたのか。そこには政治資金の問題を追及してきた弁護士、公認会計士、研究者の強い思いがあった。それはこの収支報告書の閲覧の期間にある。この収支報告書は総務省と自治体の選挙管理委員会に届けられ閲覧に供されるが、その期間は僅か3年でしかない。だからこの「82万9394円」は既に閲覧できない。政治資金センターのデータベースはその記録を残す役割を担っている。

 データベースの維持管理は無料ではない。全て参加者の手弁当で運営されている。その資金もつきかけている。ぜひ、心ある皆さんに支援をお願いしたい。

 この安倍氏側の説明の不自然さは小欄でも再三、取り上げてきた。その小欄がこのたび、徳間書店から「ファクトチェック ニッポン」として書籍化されることになり、既に書店に並んでいる。副題は「安倍政権の7年8カ月を風化させない事実の記録」だ。「桜を見る会」に加えて、検察庁法改正、新型コロナウイルスへの対策、トランプ政権との関係、普天間基地の問題、総理会見の問題など、前政権の言動の記録となっている。その検証は当然、今の菅政権に直結する問題をはらんでいる。ぜひ、書籍化された「ファクトチェック ニッポン」も手に取っていただきたい。


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