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買収支出の記載のない河井夫妻両支部計1億5000万円収支の特徴~河井案里氏の政党支部の収支を中心に~

はじめに

 自民党本部が2019年参議院通常選挙までに河井夫妻の両政党支部に交付した金額は各計7500万円、合計1億5000万円でした(なお、2019年1年分では後述するように計1億7170万円)。

 もっとも、克行氏の政党支部は自民党本部からの計7500万円のほとんどを案里氏の政党支部に寄付していました(つまり、案里氏の政党支部が1億5000万円のほとんどを受領していた)ので、以下では、案里氏の支部に絞って、その収支の特徴を分析することにしましょう。

1.河井案里氏の政党支部の訂正された2019年分収支報告書の収支の特徴

「自民党広島県参議院第7選挙区支部」(代表・河井案里)の訂正された2019年分収支報告書

(1)収入の特徴

この収支報告書の3枚目によると、収入総額(本年の収入額)2億2113万円余り

そのうち、

  1. 「個人からの寄附」が1892・5万円で(収支報告書の3枚目)、そのうちの計1882万円は河井案里氏からの寄附金であり(収支報告書の8枚目・9枚目)、
  2. 案里氏から3000万円を借入れ(収支報告書の5枚目、なお、54万円しか返済せず、2019年末で借入金は2946万円も残っています。収支報告書の55枚目と60枚目)。
  3. 「本部又は支部から供与された交付金に係る収入」は計1億5874万円余りで、そのうち「自民党本部からの交付金」は週刊誌報道の計7500万円を含め計8300万円、克行氏の「自民党広島県第3選挙区支部」からの交付金が「事務所の無償提供」を含め計7474万円余り、「自民党広島県支部連合会」からの交付金が100万円(収支報告書6枚目)。
  4. 「法人等からの寄附」は計40万円(収支報告書の3枚目、10枚目)
  5. 「政治団体からの寄附」は計122万円(収支報告書の3枚目、11枚目)
  6. 政治資金パーティー「自民党広島県産委員選挙区第7支部『河井あんり 飛翔のつどい』」(2019年6月2日)の収入が1152万円余り(収支報告書の12枚目)、その経費支出は、254万円弱(収支報告書の51枚目)。純収益は898万円余り。

(2)支出の特徴

①「支出総額」は2億1585万円余り(収支報告書3枚目、15枚目)。
そのうち
「経常経費」の支出合計額は4667・8万円余り(収支報告書15枚目)。
「政治活動費」の支出合計額は1億6917・6万円余り(収支報告書15枚目)。

②「政治活動費」の支出のうち、
「選挙関係費」の支出額は2405万円(収支報告書15枚目)。これは、全額、河井案里候補への寄附であり(収支報告書40枚目)、これについては、公職選挙法に基づく案里候補の選挙運動収支報告書(下記)に記載があります。

河井案里候補の選挙運動収支報告書

「機関紙誌の発行事業費」は6400万円余りで(収支報告書15枚目)、
そのうち「印刷製本費」は1572万円余りで(収支報告書41枚目)、
「荷造発送費」が4828万円余りでした(収支報告書42枚目から45枚目)。

「宣伝事業費」は5807万円弱で(収支報告書15枚目)、
そのうち、「宣伝広報費」は4955万円余りで(収支報告書46枚目から49枚目)、
「荷造発送費」が851万円余りでした(収支報告書50枚目)。

「調査費」は367万円弱(収支報告書15枚目、52枚目)
「寄附・交付金」は233万円弱で、全額、克行氏の「自民党広島県第3選挙区支部」への寄附でした(収支報告書15枚目、54枚目)

別紙

2.注目点

(1)自民党本部からの破格の交付金

 自民党本部が2019年に河井夫妻の両政党支部に交付した金額は、週刊誌が報道した各7500万円を含め計8870万円(第3選挙区支部)と計8300万円(参議院第7選挙区支部)、合計計1億7170万円でした。

 この金額は、自民党本部から、例えば河井克行氏の政党支部や、溝手顕正氏(2019年参院選で落選)の政党支部が受け取った各交付金(下記)と比較しても、破格の金額でした。

自民党広島県第3選挙区支部(河井克行)の自民党本部からの年間交付金収入

自民党広島県参議院選挙区第2支部(溝手顕正)の自民党本部からの年間交付金収入

(2)河井克行氏の政党支部と比較しても破格の支出額

 河井克行氏の「第3選挙区支部」が、衆議院総選挙のあった2017年分の各支出(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/340301/2017.pdf)と河井案里氏の参議院第7選挙区支部の2019年分の各支出を比較しても、後者の支出額が破格であることを確認できます。

  1. 「参議院第7選挙区支部」の支出総額は2億1585万円余りで、これは、克行氏の「第3選挙区支部」の2017年の支出総額は約7459万円余りなので、その3倍近い支出額。
  2. 「経常経費」の支出合計額は4667・8万円余り。これは、克行氏の支部の支出総額は約3470・5万円余りなので、約1200万円も多い支出額。
  3. 「政治活動費」の合計額は1億6917・6万円余り。これは、克行氏の支部の支出総額は約3988・8万円余りなので、4倍強で、約1・2億円も多い支出額。

 そのうち、「選挙関係費」の支出額は2405万円。これは、克行氏の支部の支出総額は766万円なので、3倍超の支出額。

 「機関紙誌の発行事業費」は6400万円余り。これは克行氏の支部の支出総額は213万円余りなので、約30倍の支出額。

 「宣伝事業費」は5807万円弱。これは、克行氏の支部の支出総額は627万円弱なので、9倍超の支出額です。

「自民党広島県第3選挙区支部」(代表・河井克行)の2017年各支出と
「自民党広島県参議院第7選挙区支部」(代表・河井案里)の2019年各支出

詳しい内容の一覧表はこちらです

(3)いまだに説明されていないこと

 なぜ自民党本部が河井夫妻の両支部に対しのみ破格な金額を交付したのか、その理由について、当時の二階俊博幹事長も安倍晋三総裁も、これまで全く説明してきませんでした。

一県会議員であった河井案理氏を自民党本部が破格のカネを交付し、当選させようとした意図がどこにあったのか、今なお説明されていないのです。

 また、今年9月22日に、自民党の柴山昌彦幹事長代理は、党本部で記者会見し、克行氏と案里氏の連名の書面を公表し、「河井氏の弁護人を通じてもらった。1億5千万円からは買収資金を出していないという報告と受け止めている」と説明しました。河井夫妻の訂正された2019年分収支報告書の各支出欄を見ても、確かに買収として支出したと思われる記載はどこにもありません。

 河井克行氏の買収事件についての東京地裁の判決では、100人に計約2871万円を提供したと認定されたと報道されました。自民党本部は、克行氏が買収として支出した資金(計約2871万円)の原資が何だったのか一切説明していません。

 しかし河井克行氏は、昨年の公判で、「地方議員への陣中見舞いや当選祝い。選挙運動でなく政治活動だった」と弁明していましたので、そうであれば、いずかの収支報告書に記載されるはずですが、現時点では、その記載は確認できません。訂正されていない収支報告書が訂正されれば、そこで記載されるのでしょうか?

 いずれにせよ、河井夫妻と自民党本部のありのままの説明が必要ではないでしょうか!

2021年10月22日


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