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国会議員の文書交通費などについての提言を各政党に緊急要請しました

自由民主党、公明党、立憲民主党、日本共産党、
国民民主党、日本維新の会、社会民主党、れいわ新選組、
NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で(各政党代表者)殿

岸田内閣総理大臣 殿

文書通信交通滞在費及び立法事務費
についての根本的な改革の要望書

2021年11月29日

530-0035 大阪市北区同心一丁目1番22号朝日プラザ扇町707号
公益財団法人 政治資金センター
共同代表 阪口 徳雄
共同代表 松山 治幸

第1 要望の趣旨

 文書通信交通滞在費と立法事務費を小手先の部分改革に終わらせず、その原資が国民の税であることを考量して根本的な改革を行われるよう強く要望します。具体的には下記の通りです

(1)文書通信交通滞在費と立法事務費を一つの法律に統合し、それを院内会派に交付し、その使途報告を法的に義務づけること、

(2) その報告書の提出につきデジタル(各報告書の記載内容の電子データー)提出すること、

(3) その報告書の提出の際には領収書の写しを添付すること、

(4) その使途の在り方については、その制度趣旨を確認して違法または不適切な支出がなされないよう使途基準を作成すること、

(5) 年度末の時点で、あるいは、交付を受けていた会派が衆参の国政選挙の結果等で消滅した時点で、支出されず残金が生じていた場合には、その残金を国庫に返還すること、

(6) この返還逃れを許さないために、政党(本部及び支部)、政治団体あるいは公職の候補者への寄付を禁止すること

を要望します。

第2 要望の理由

 私たち公益財団法人政治資金センターは、今年9月1日付で、政党及び政治団体の政治資金収支報告書のデジタル化の義務づけを求めて各政党代表、総理、総務大臣及びデジタル庁長官に対し要請書「国会議員等の政治資金収支報告書のデジタル化の要望」を送付しました(https://www.openpolitics.or.jp/news/428/)。

 その際、各政党には、この点につき、アンケートを実施し、翌10月には、ほとんどの政党から「早急に実施すべきである」との回答を受け取り、各回答を公表しました(https://www.openpolitics.or.jp/news/436/)。

 今年10月31日に衆議院議員総選挙が施行され、衆参の国会議員に交付される文書通信交通滞在費が当該総選挙で初当選した議員にも交付されたことに関し、10月31日の一日で同月1か月分の文書通信交通滞在費100万円が満額交付されたことが問題である旨、一部の議員・政党によって主張されています。

 しかし、問題の本質はその点ではありません。後述するように現行の法律は、使途報告が制度化されていないため、何に支出されたか、国民が使途をチェックできず、第二の議員報酬になっているのではないかとの疑念が生じてきました。

 また、使途を自主公表している政党は少数にとどまるうえに、自主公表している政党の中には、法律の趣旨とは異なり、文書通信交通滞在費を政治資金であると説明し、政党支部に寄附しているところもあります。

 したがって、国民の疑念が生じないよう、文書通信交通滞在費の使途報告を法律で義務づけるとともに、国会で、公金の目的外出がなされないよう、その使途の在り方をきちんと議論し、使途基準を作成していただきたい。

 後述するように文書通信交通滞在費は、地方議会における政務活動費に相当しますが、その点は、会派に交付される立法事務費も同じでありますから、両者を統合して使途報告を行し、領収書の写しの提出を義務づけるとともに、残金が生じれば、国庫に返還させるべきですし、それを徹底するためにも、政党(本部や支部)、政治団体、公職の候補者に寄付することを禁止していただきたい。

3 文書通信交通滞在費について定める法律は、2つあります。1つは国会法であり、その第38条によると、「議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、別に定めるところにより手当を受ける。」と定めており、これを受けて、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」は、その第9条で以下のように定めています。

「各議院の議長、副議長及び議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、文書通信交通滞在費として月額百万円を受ける。
2 前項の文書通信交通滞在費については、その支給を受ける金額を標準として、租税その他の公課を課することができない。」

 以上の2つの法律は戦後まもなく1947年に制定され、制定当初から「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなすため」であると、“公”のものに限定したうえで「月額125円」の「通信費」としてスタートしていますが、その後、金額は増額されました(1948年には「月額1000円」など)。また、目的を“公”のものに限定している点は変わらないものの、1963年には「通信交通費」に名称が変更され、月額は5万円から10万円へと増額されました。

 当時は議員会館や議員宿舎もなく、国会で東京に滞在するために種々の雑費が必要となるので、以上とは別に、「国会議員の歳費、旅費及び手当等支給規程」に基づき、「滞在雑費」として日額40円が支給されました。

 また、1948年には各委員会が閉会中も継続審査を行うようになったことから「審査手当」が導入され、閉会中の「出席日数に応じて日額300円の定額によって手当を受ける」ことが法制化されました(国会閉会中委員会が審査を行う場合の委員の手当に関する法律)。その後増額され、1951年に日額750円から1500円へと引き上げられるとともに名称が「審査雑費」となりました(国会閉会中委員会が審査を行う場合の委員の審査雑費に関する法律)。

 1966年の「議員歳費等に関する調査会(座長・宮澤俊義東京大学名誉教授)」は、「通信交通費」は実費弁償的な性格のものとして支給することとして10万円から15万円程度に引き上げられ、また、「滞在雑費」と「審査雑費」は廃止し、新たに議員の国政に関する調査研究活動の強化を期待して「調査研究費」として月額10万円程度を支給し、かつ課税の対象とするとの答申しました。

 これを受けて「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」が改正され、1966年4月から「滞在雑費」と「審査雑費」を廃止し、新たな「調査研究費」の新設が決められました。

 1974年には「通信交通費」(月額23万円)と「調査研究費」(同10万円)が統合され、「文書通信交通費」(同35万円)となり、「調査研究費」分が元々の非課税となり、その後も増額され、1993年には「滞在費」を追加して名称を「文書通信交通滞在費」と変更した上で、月額75万円から100万円へと引き上げられました(なお、以上については、岸井和「議員の歳費、手当と国会のコスト(4)―文書通信交通滞在費」2019.09.13
https://national-diet.com/cost4)などを参照)。

4 文書通信交通滞在費」が以上のように「実費弁償的な性格のもの」であり、法律の条文に明記されているように、議員の公的な活動のために交付される点に着目すると、それは、地方議会の会派・議員に交付されている「政務活動費」に相当します。

 「政務活動費」は、「文書通信交通滞在費」だけではなく、「国の唯一の立法議会」(日本国憲法第41条)を構成している衆参各院の会派(院内会派)に交付される「立法事務費」を含んでもいます。地方議会では条例制定権があるからです。(日本国憲法第94条、地方自治法第14条)。

 「国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律」(1953年制定)は、「国会が国の唯一の立法機関たる性質にかんがみ、国会議員の立法に関する調査研究の推進に資するため必要な経費の一部として、各議院における各会派に対し、立法事務費を交付する。」と定め(第1条第1項)、毎月「各議院における各会派の所属議員数に応じ、議員1人につき65万円の割合をもつて算定した金額」が会派に交付されると定めています(第2条第3条)。

 しかし、その使途報告は「文書通信交通滞在費」と同様法律で義務づけられてはいません。ほとんどの政党(本部)が自己の政治資金収支報告書において収入として記載しているのが現状ですが、政党と院内会派は別物ですし、立法事務費は公的な立法活動のための経費を公費で負担するものですから。政治資金とは別に使途報告を制度化すべきです。

 2001年、衆議院議長の諮問機関「衆議院改革に関する調査会(座長・瀬島龍三NTT相談役)」は、「立法事務費及び文書通信交通滞在費は実費弁償的なものであり、議員活動に必要不可欠であるものの、領収書等を付した使途の報告書の提出を義務付け、報告書を閲覧に供するべきである。」と答申しました(「衆議院改革に関する調査会答申」(2001年11月19日)https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/ugoki/h13ugoki/153/153chosa.htm)。

 したがって、私たちは、地方議会における「政務活動費」に相当とする「文書通信交通滞在費」及び「立法事務費」を一つに統合して、法律でデジタルによる使途報告と領収書の写しの添付を義務づけることを要望いたします。そうすれば、インターネット公表も容易に行えます。

 国会において、その検討をする際には、地方議会における政務活動費と同様、その使途基準を作成し、政治活動・選挙運動・後援会活動に支出できないことを確認していただきたい。政治活動に対する公金負担は政党助成法による政党助成金(政党交付金)があるので、尚更のことです。

 また、地方議会における政務活動費については、かつては、年度末に使い切らず残金が生じても、自治体への返還はなされていませんでしたが、不祥事の発覚が続き、今では、残金が生じれば返還するのが常識になっています。

 したがって、「文書通信交通滞在費」及び「立法事務費」を一つに統合した場合においても、年度末の時点や、衆参の国政選挙の施行の結果等により既存の会派が消滅した時点で、残金が生じていた場合には、国庫に返還することを法律で義務づけることを要望いたします。

 また、その返還逃れを許さないためにも、政党、政治団体あるいは公職の候補者への寄附を禁止していただきたい。

以上。


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