公益財団法人政治資金センターでは、政治資金収支報告書検索システムの管理・運営だけでなく、市民の皆さんが政治資金に関心を持ち、理解を深めるための研究・啓発活動も行っています。今回はその一環として、これまで日本で刊行されてきた政治資金に関する文献とその概要をご紹介します。文献の一部はインターネットで無料で閲覧できるので、政治資金に関心がありもっと深く知りたいという方はぜひ読んでみてください。
小林俊治『企業の政治献金: "もう一つの投資"の論理』日本経済新聞社、1976年
ロッキード事件の発覚と同時期に書かれた本であり、企業の政治献金とそれによる政治腐敗の歴史を詳説するとともに、企業や個人による政党への寄付金額を開示しています。さらに、企業が政治献金する動機・政党が政治献金を受け取る動機を選挙キャンペーンの側面から分析しています。
▷以下のリンクから、国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能です(国会図書館デジタルコレクションを利用するには、国立国会図書館の利用登録が必要です)
阪上順夫『選挙制度・政治資金の実態と各党の政策』教育社、1979年
本書は、日本において政治資金がらみの汚職が蔓延する制度的要因として、選挙制度・公職選挙法による選挙運動の規制、政治資金規正法の欠陥に着目しました。特に、各制度ができた背景や、法改正が進まない理由を歴史的観点から分析しています。
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岩井奉信『政治資金の研究: 利益誘導の日本的政治風土』日本経済新聞出版、1990年
本書は、1980年代までの政治資金の流れや内訳(政治資金全体の推移、地方・中央、政党ごとの政治資金の内訳、政党ごとの集金構造)を詳細に解説しています。政治資金について量的に把握しているという点で、同時代の他の文献とは一線を画しています。また、政治家が巨額の政治資金を必要とする理由について、法規制の欠陥・選挙制度の側面から説明するとともに、圧力団体が献金をするインセンティブについても解説しています。
▷こちらも以下のリンクから国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能です。
毎日新聞政治部編『政治家とカネ』毎日新聞出版、1990年
毎日新聞の連載「政治家とカネ」をもとに執筆された本です。研究書ではありませんが、リクルート事件前後の自民党の金脈政治の実態を詳細に記述しています。
▷こちらも以下のリンクから国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能です。
辻中豊『現代日本の市民社会・利益団体』木鐸社、2002年
本書は日本の市民社会組織の構造を明らかにするために行った調査(JIGS調査)の結果を中心にまとめています。政治資金に関する直接的な記述はありませんが、日本の圧力団体のロビイング戦略について分析している章もあります。
辻中豊『現代社会集団の政治機能: 利益団体と市民社会』木鐸社、2010年
本書は利益団体だけでなく、2000年代以降急速に増加したNPOや自治会も含めた市民社会について包括的に調査に基づいた考察を行なっています。政治資金に関する直接的な記述は少ないですが、団体が政治にどのようなルートで接近しているのか、当時の民主党の勢力拡大に際して団体の活動がどのように変化したのかに言及している箇所があります。
▷本書のPDFが「つくばリポリジトリ」でインターネット公開されています。以下のリンクから閲覧可能です。
辻中豊『政治変動期の圧力団体』有斐閣、2016年
本書は、戦後〜民主党政権成立までの圧力団体の活動の変化について説明しています。政治資金に関する直接的な記述はありませんが、1980年代以降の団体と政党の関係、圧力団体と行政の関係、民主党政権におけるリベラル系団体の影響力について重点的に解説しています。
本記事でご紹介した文献は、政治資金に関する調査研究の一部に過ぎません。
公益財団法人政治資金センターは、今後も政治資金に関する文献のご紹介を続けていく予定です。また、当法人では、今後も政治資金について理解を深める手助けとなるような情報を発信していきます。当法人の調査研究・啓発活動や記事につきましてご要望などございましたら、問い合わせフォームよりご意見をお聞かせいただけますと幸いです。