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菅義偉総理の政治資金「収入」を種類別に確認してみました

はじめに

 自民党などの政治家は政党支部を含む複数の政治団体を有しているので、政治家の政治資金の収支の全体像を知るためには、その政治家のもっている複数の政治団体の政治資金収支報告書を見ないといけません。

 ですから、公益財団法人「政治資金センター」のHPでは、政治家ごとに複数の政治団体の各政治資金収支報告書を、直近の3年分だけではなくその前のものも含め、PDFでアップして紹介しています

 具体的な例を挙げて解説した方がわかりやすいと思いますので、この投稿では、具体例として、前官房長官で現在の内閣総理大臣(総理)である菅義偉衆議院議員の政治団体の政治資金収支報告書を分析してみました。

同議員の2011年以降の政治資金収支報告書は政治資金センターの以下のページでまとめてアップされています(以下のリンクをクリックして各政治資金収支報告書を実際にご覧ください)。

菅義偉(神奈川2区)

 そこでは、複数の政治団体の政治資金収支報告書が紹介されていますが、その中で菅議員の収支の主要な政治団体は、資金管理団体の「横浜政経懇話会」と政党支部の「自由民主党神奈川県第二選挙区支部」です。

 ただ、2つの政治団体・政党支部の政治資金収支報告書を見ると、前者は主要な事務所の所在地が東京都内の議員会館であり、後者は横浜市内なので、その点では、両者の政治資金の収支を一緒に分析しても良いのかと疑問に思う方もあるかもしれません。素朴な疑問だと思います。

 しかし、前者は東京都内に主要な事務所があるのに、政治団体の名称に「横浜」が入っていますし、いずれも代表は菅義偉衆議院議員で、いずれも国会議員関係政治団体です。また、2011年から2019年まで3人が会計責任者になっていますが、両者の会計責任者は同じ時期は全く同一人物です。

団体名 自由民主党神奈川県第2選挙支部 横浜政経懇話会
所在地 横浜市南区宿町2丁目49番地
メヅン・ド・ラメール101号室
東京都千代田区永田町2-1-2
衆議院第2議員会館1113
代表者 菅義偉 菅義偉
会計責任者 田中加奈(2011年~2013年)
小西加奈(2014年~2015年)
新田章文(2016年~2019年)
田中加奈(2011年~2013年)
小西加奈(2014年~2015年)
新田章文(2016年~2019年)
事務担当者 田野井久美子(2011年~2013年)
田中都公美(2014年~2019年)
田中加奈(2011年~2013年)
小西加奈(2014年~2019年)

 したがって、菅総理の政治資金の収支の全体像を知るためには、上記2つの政治団体の政治資金収支報告書を分析する必要があるのです。今回は、収支のうち収入に注目します。以下、2011年以降の政治資金全体を具体的数字を紹介しながら紹介・分析してみましょう(目の病気で視力が低下しており数字の見間違いなどがあるかもしれません。そのような場合があれば、ご指摘いただければ幸いです)。

1.衆議院総選挙の年は収入が多い!

  まず、政党支部と資金管理団体の「前年からの繰越額」を除く「本年の収入」を見ると、衆議院総選挙の年(2012年、2014年、2017年)は収入が多いことが確認できますが、2014年の総選挙後は総選挙がない年ても1億円を超え、直近の2年は1億3000万円前後に増えています。長期政権になったことが政治資金の収入増加につながった可能性がありそうです。

 政党支部と資金管理団体を比較すると、政党支部の収入は資金管理団体の2倍以上もあり、特に総選挙の年(2012年、2014年、2017年)には政党支部は多額の収入を得ており、その額は1億円超もあり、2012年と2017年は1億2000万円超もあります。

「本年の収入」(前年からの繰越額収入を除く)の各合計額(円)

自由民主党神奈川県第2選挙区支部 横浜政経懇話会 合計額 備考
2011年 79,054,498 16,407,816 95,462,314  
2012年 123,183,301 19,637,060 142,820,361 衆議院総選挙
2013年 66,691,743 28,567,520 95,259,263  
2014年 103,629,935 29,781,402 133,411,337 衆議院総選挙
2015年 69,820,787 33,457,545 103,278,332  
2016年 67,570,375 41,337,651 108,908,026  
2017年 120,247,480 37,490,493 157,737,973 衆議院総選挙
2018年 73,603,962 39,830,642 113,434,604  
2019年 74,830,253 37,630,767 112,461,020  

 

2.最大の収入源は政治資金パーティー収入

 では、「本年の収入」のうち最大の収入源は何でしょうか?

 2011年から2019年までの主要な収入源を種類別にまとめると、政治資金パーティー開催による収入額が突出して多いことがわかります。その次は法人からの寄附、いわゆる企業献金であり、第三が本部からの交付金です。

政党支部と資金管理団体の主要収入源を比較すると、前述したように政党支部の方が収入額は多いことがここでも確認できますが、それに加えて、資金管理団体は政治資金パーティー収入を得るための政治団体と言っても過言でないくらいその収入額が団体内で突出していることがわかります。

2011年~2019年の主要収入の種類別合計額(円)

 収入の種類 自由民主党神奈川県
第2選挙区支部
横浜政経懇話会 合計額
本部からの交付金 136,120,000 0 136,120,000
個人からの寄附 56,941,685 1,895,001 58,836,686
法人からの寄附 174,411,622 0 174,411,622
政治団体からの寄附 43,460,000 1,100,000 44,560,000
政治資金パーティー 363,488,340 279,039,630 642,527,970

 

3.収入の種類別でも総選挙の年に各収入は増えている!

 先程、衆議院総選挙の時に収入額が増えていることを確認しましたが、収入の種類別でもその傾向は同じのようです。

(1)本部からの交付金

 まず、「本部からの交付金」ですが、その収入があるのは、政党支部だけです。「本部からの交付金」は、そのほとんどが政党交付金(税金)です。例えば2017年の2840万円のうち2700万円、2019年の1370万円のうち1300万円は政党交付金です。

本部からの交付金

自由民主党神奈川県第2選挙区支部 横浜政経懇話会 合計 備考
2011年 7,000,000 0 7,000,000  
2012年 18,150,000 0 18,150,000 衆議院総選挙
2013年 12,500,000 0 12,500,000  
2014年 19,870,000 0 19,870,000 衆議院総選挙
2015年 11,400,000 0 11,400,000  
2016年 12,700,000 0 12,700,000  
2017年 28,400,000 0 28,400,000 衆議院総選挙
2018年 12,400,000 0 12,400,000  
2019年 13,700,000 0 13,700,000  

(2)個人からの寄附

 次に「個人からの寄附」ですが、これも総選挙の年に金額は増えていますが、それは政党支部の場合です。一方、資金管理団体の個人からの寄附は必ずしも多くはありません。総選挙の時もそれは同じです。

個人からの寄附

自由民主党神奈川県第2選挙区支部 横浜政経懇話会 合計 備考
2011年 2,842,685 60,000 2,902,685  
2012年 15,929,000 321,000 16,250,000 衆議院総選挙
2013年 4,910,000 321001 5,231,001  
2014年 12,375,000 257,000 12,632,000 衆議院総選挙
2015年 3,160,000 272000 3,432,000  
2016年 2,755,000 214,000 2,969,000  
2017年 9,670,000 150,000 9,820,000 衆議院総選挙
2018年 2,860,000 150,000 3,010,000  
2019年 2,440,000 150,000 2,590,000  

 

(3)法人からの寄附(企業献金)

 次に「法人からの寄附」ですが、これはいわゆる企業献金です。企業献金を受領できるのは政党支部だけです。企業献金も総選挙の年に金額が多くなっています

法人からの寄附

自由民主党神奈川県第2選挙区支部 横浜政経 懇話会 合計 備考
2011年 17,139,500 0 17,139,500  
2012年 30,643,180 0 30,643,180 衆議院総選挙
2013年 17,702,409 0 17,702,409  
2014年 28,755,991 0 28,755,991 衆議院総選挙
2015年 16,814,302 0 16,814,302  
2016年 14,020,928 0 14,020,928  
2017年 22,568,302 0 22,568,302 衆議院総選挙
2018年 13,853,520 0 13,853,520  
2019年 12,913,490 0 12,913,490  

(4)政治団体からの寄附

 次は「政治団体からの寄附」ですが、これも総選挙の年に増えていますが、資金管理団体の場合はほとんどありません。政党支部も企業献金に比べればす少ないですね。

政治団体からの寄附

自由民主党神奈川県第2選挙区支部 横浜政経 懇話会 合計 備考
2011年 6,100,000 0 6,100,000  
2012年 10,160,000 800,000 10,960,000 衆議院総選挙
2013年 720,000 300,000 1,020,000  
2014年 13,280,000 0 13,280,000 衆議院総選挙
2015年 100,000 0 100,000  
2016年 100,000 0 100,000  
2017年 12,900,000 0 12,900,000 衆議院総選挙
2018年 0 0 0  
2019年 100,000 0 100,000  

 

4.政治資金パーティー収入は総選挙を経て安定的に増えている

 最後に「政治資金パーティー収入」ですが、これは総選挙が解散によるもので、事前に確定していないこともあってか、一番の収入源らしく毎年安定しています。総選挙の年に増えているのではなく、特に2014年の総選挙以降は、そう選挙を経るたびに増えていて、2017年の総選挙後は毎年合計8000万円超です。長期政権の影響でしょう。

 政党支部と資金管理団体を比較すると政党支部の方が金額は多いですが、資金管理団体の金額が特に少ないわけではありません。

 政治資金パーティー収入については、寄附と違い、パーティー券購入者(個人、法人、政治団体)別の記載が政治資金収支報告書にはないので、購入者別の数字はわかりません。

 「政治団体からの寄附」はほとんどありませんでしたが、パーティー券は政治団体も購入できるので、事実上の政治団体献金はこの政治資金パーティーで受領している可能性が高いのではないでしょうか。また、パーティー券は企業も購入できるので、事実上の企業献金はこの政治資金パーティーで受領している可能性が高く、前述の企業献だけが企業献金と考えてはいけないと見た方がよさそうです。

政治資金パーティー

自由民主党神奈川県第2選挙区支部 横浜政経懇話会 合計 備考
2011年 45,119,790 15,060,000 60,179,790  
2012年 48262050 17,800,000 66,062,050 衆議院総選挙
2013年 30,760,000 27,859,630 58,619,630  
2014年 29,320,000 29,520,000 58,840,000 衆議院総選挙
2015年 38,160,000 33,180,000 71,340,000  
2016年 37,620,000 41,120,000 78,740,000  
2017年 45,996,500 37,340,000 83,336,500 衆議院総選挙
2018年 43,247,000 39,680,000 82,927,000  
2019年 45,003,000 37,480,000 82,483,000  

                                           以上。


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